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日本とアメリカ/アート教育の違い

日本とアメリカのアート教育の違いをご存知ですか。ここでは大学でのお話をしたいと思います。

日本人からすると、アメリカもヨーロッパも同じ欧米に思えるかもしれませんが、歴史あるヨーロッパに比べると、アメリカは現代アートの国なので、決して一括りにはできません。それでも、日本に比べると、アートはずっと身近なもので、誰でも気軽に入っていけ、皆が楽しめる分野に思えました。

日本の田舎に育った私の周囲には、アートを目指す人は一人もいませんでしたが、アメリカにはどんな田舎にもコミュニティ・カレッジというものがあり、小さくても学部は多岐に富んでいて、専門性もかなりあり、アート専攻希望者も珍しくないのでした。ただ海外からアート留学しにくるほどではなった為、私が入学したその年、たまたま日本から来た私と香港から一人とポーランドからも一人、アート留学生が来たので、ローカル新聞の人が取材に来て話題になっていました。

日本だとアートを勉強したければ、芸術大学一択で、とにかく厳しい受験を突破するしかなく、その受験も2浪、3浪は当たり前で予備校に通う人も多いと聞きますから、アメリカとは大分考え方が違います。

アメリカの大学は、TOEFLやSAT、ポートフォリオ、志望理由の作文や学校からの推薦状などで査定されます。(軽い電話面接みたいなのもあったかもしれません)

アメリカには、美術専門の大学があるのはもちろんですが、一般学科とアート学科を併せ持つ大学も少なくありません。アートの大学にもそれぞれ得意分野などの特色があり、その中でもコミュニティ・カレッジは(ほとんどの生徒がここから他の大学へ転入する)入り易く、学費を抑えたい人には特に嬉しい大学なのでした。

コミュニティ・カレッジ… 公立の2年制大学。地域の為の大学なので、特に地域の人たちには、かなりお得な学費が設定されており、様々な家庭環境や年齢の人が学びに来ていた。

目次

日本のアート教育は、知識やテクニック重視

私は、1つ前の記事(絵画教室に通うことをオススメする理由)で書いたように、絵は好きで描いてはいたものの、特別絵が上手いとも思っていなかったし、それを生業にしようなんて考えることすら大それた事と思っていたので、特に日本のアートの世界のことは深く勉強することはありませんでした。ただ西欧の油絵には興味があり、好きな絵の写真を眺めたりすることくらいでした。

なので、私が日本のアート教育のことを知ったのは、アメリカの大学在学中で、西洋から見た日本のアートでした。元々器用だった私が、デッサンで細かいところを描き込み、リアルに近づけようと普通に描いていると、上手いと褒めてくれるものの「やっぱり日本人だね」と言われるので、なんだか腑に落ちませんでした。

でも、それには理由がありました。そのちょっと前から、海外で活躍する日本人アーティストに、エアブラシを使ったスーパーリアリズムの技法を使う人が沢山出て、脚光を浴び、それが固定観念化していたようでした。

油絵で親切だったプロフェッサーが、そんなことも知らない私に、わざわざ自分のアートブックを持ってきて見せてくれましたが、「Super realism」なる分厚い本には、超写実主義な日本人の絵がびっしり載っていて、凄い技術がこれでもかってくらい見られる凄い本でした。

因みに、欧米で出版されるアートブック(美術本)の質の高さには、滞在中、惚れ惚れしていました。図書館に行けば、分厚く美しいアートブックが山のようにあるのです。ピカソ一人上げたって、数えきれないほどの冊数が検索に上がりますから、やはり本場は違うと思いました。欧米のアートブックのプリントの良さ(面白いことにプリントは日本でされていて、日本のプリント技術は高く評価されていました)とコレクションの凄さはピカイチでした。日本で見たことのある美術本とは載せている作品の数の差が段違いでした。有名アーティストの見たことのない作品が見れるアートブックに釘付けになったのを覚えています。当時の日本はまだ図書館にコンピューターも導入されていませんでしたから、何もかもが新鮮でした。

話を元に戻しますが、日本の学校が技術を重視している分、日本人アーティストというと、売りはテクニックだということがよく分かりました。

アメリカのアート教育は、コンセプト重視

それに対して、アメリカはテクニカルな面よりもコンセプトを重視します。

なぜそれを描いたか、どうやってそれを導き出したかなどのプロセスや、それに込めたメッセージ、コンセプトなどに重点をおきます。より作品に対して、考えやメッセージを求めれる感じです。

授業には、発表と評価の時間がいつもたっぷり取ってあり、自分の作品の説明はもちろん、クラスメートの作品のcritique(クリティーク=批評する)もします。日本の授業のように生徒が黙っていることは皆無で、かなり鍛えられました。こちらに慣れてしまうと、先生の話だけを黙っている聞いている日本の授業に疑問を抱くようになります。

絵のコンセプトや伝えたいメッセージを考えることは、実際の仕事でも求められることなので、とてもいいことだと思っています。

ただ日本の学校の授業を考えると、アートに関わらず、自分たちの意見を言い合うことは、いまだにありませんし、小学校の図工の時間は、この60年余りで約35%も減らされたと言いますから、情けないことに国というか政府は相変わらず情操教育を重要視していないのが明らかです。

アート教育においては、更に下の扱いで危惧しています。他の授業同様、小中学校の図工、美術の時間で、生徒の意見を問われるのは昔から変わらず授業終了の5分か10分前、先生しか読まないプリントに感想を書かされて終わりです。これで表現力が養われるかと言ったら、そんなの無理です。この時間になると、小1年生などは、支援の必要のある子ない子関係なく、なんて書いたらいいのかが分からない子供続出で、みんな一斉に助けを求めます。

勿論、全員に対応できるわけないので、対応できなかった子達がなんと書いたか後で見ると、皆、判を押したように「たのしかった」と書いていて、情けなくなります。

絵画教室で個性を育む

日本の学校の制度が変わるのを待っていたらいつになるか分かりませんが、絵画教室にはすぐ通えます。留学も今は円安と物価高で昔ほど気軽に行けるものではなくなってしまいました。
そう考えると、絵画教室は高い習い事ではないかもしれません。

私は、他の絵画教室で教えている時もそうですが、出来るだけ子供たちの作品の感想を言うようにしています。始めは、子供たちも絵に対しての感想をどう言っていいのか分からなかったりするのですが、だんだん分かるようになっていきます。そして、本人にも自分の絵や人が描いた絵のどこが好きか、どういうふうにしたかなどプロセスを考え、説明できるようにさせたり、意図したことやなぜそれを描きたかったのかなど、子供たちとやりとりするようにしています。これは、日本の学校ではやってくれないことです。

自分の描いた作品について聞かれて嫌がる子供はほとんどいないので、聞くと始めは戸惑いますが、皆嬉しそうに何かしら話してくれます。なので、それを丁寧に聞いてくれる人がいるか、いないかなのではないかと思っています。それだけでも大きく違ってくるのです。そして、繰り返し練習していくうちに描く絵にメッセージが込められ、描き手の個性も育まれていくのではないかと思います。

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